プロダクトAI翻訳Literess

AIは大好き。だけど……

私たちは毎日AIを使ってものづくりをしていますし、AIについて人々が何を語っているかも毎日読んでいます。この記事では、AIに対するTranseptの立場と、私たちのAIが守っている4つのルールをご紹介します。

Mariia IvakhnenkoVitalii Vlasiuk
Mariia Ivakhnenko & Vitalii Vlasiuk読了目安:12分
Literess, Transept’s illustrated assistant, sits at a desk and stamps a page labelled “AI draft” with a red “Reviewed by human” stamp, while a small boxy robot holds out the next page and asks “Approve?”. Behind a sofa, a nervous stick figure in a “Human” T-shirt holds a sign that reads “AI will end us”. The title reads “AI drafts. You decide.”
目次

まずは告白から。私たちは根っからのAI好きです。何年も前から言語モデルを相手に仕事をしてきましたし、新しいモデルが出れば、その週のうちに試します(ときにはスプレッドシートとストップウォッチを片手に)。そもそもTranseptが生まれたのも、Vitaliiが12万語の自作小説を手当たり次第の機械翻訳ツールにかけてみたところ、作品の声を残せたものがひとつもなかったからです。

そして、ネットも読んでいます。毎日。

ネットではAIがどう語られている?

Redditに実際に投稿された6件(ユーザー名は非表示):「もう、ちょっと気の利いた言い回しをしただけで、ChatGPTを使ったと責められる」(r/ChatGPT)/「AIが嘘をつく」――何時間も「Googleドキュメントを送ります」と言い続けたチャットボットについて(r/Teachers)/「2026年、不安定なフリーランス翻訳者のキャリアにしがみつく今の気分」(r/TranslationStudies)/機械のマニュアルをAIで翻訳したら、エア配管(air line)が旅客航空会社(airline)になってしまった話(r/TranslationStudies)/「KDPの上位50タイトルの約半分がAIっぽかった」(r/selfpublish)/「AIに翻訳者の仕事を奪われた。39歳で一からやり直す」(r/TranslationStudies)。

Redditに実際に投稿されたものです(ユーザー名は非表示)。リンクは記事末尾の出典に掲載しています。

笑える話もあります。何時間も「Googleドキュメントを送ります」と言い続けるチャットボット。圧縮空気が旅客機の大編隊に化けてしまった機械マニュアル。一方で、まったく笑えない話もあります。仕事を失っていく翻訳者たち。自分で書いた文章を「AI」呼ばわりされる作家たち。量産された本に埋め尽くされていく自費出版のランキング。

数字もこの空気を裏づけています。アメリカの成人の半数が、日常生活の中のAIについて「期待より不安のほうが大きい」と答えており、2021年の37%から増えています(Pew Research Center)。また、英国作家協会(Society of Authors)による2024年の調査では、翻訳者の36%が生成AIによってすでに仕事を失っていました(European Writers’ Council)。

では、世界の終わりについては?

破滅論コーナーから4枚のカード:TIME誌(2023年3月)のエリエザー・ユドコウスキー「すべて停止せよ」/r/Futurologyへの投稿「列車が迫ってくるのが見えるのに、自分には何もできない」/エリエザー・ユドコウスキーとネイト・ソアレスの著書『If Anyone Builds It, Everyone Dies』(Little, Brown、2025年9月)/MIRIのウェブサイト「AI業界は断崖に向かって突き進んでいる」

そして、破滅論コーナーもあります。私たちの多くがAIに触れるずっと前からその危険を訴えてきたエリエザー・ユドコウスキーは、2023年にTIME誌への寄稿で、一時停止では足りない、すべて停止すべきだと書きました。2025年にはネイト・ソアレスとの共著で、おそらく出版史上もっとも誤解の余地のないタイトルの本を出しています。その名も『If Anyone Builds It, Everyone Dies』(誰かが作れば、全員が死ぬ)。彼が共同設立した機械知能研究所(MIRI)は現在、超知能の開発を世界規模で停止するよう訴えています。

私たちが作っているのは超知能ではありません。翻訳エディタです。

それでも、破滅論コーナーからひとつだけ、真剣に受け止めた考えがあります。AIを使ってものを作る人間は、そのAIに何をさせ、何をさせないのかを、はっきり表明すべきだ、ということです。

では、Transeptの立場は?

Transeptでは、下書きするのはAI、決めるのは人。そして、どちらが何をしたかは記録に残ります。

AIは、最初の下書きを作る機械としてはすばらしいけれど、書き手としては失格です。翻訳には誰かの名前が載ります。その誰かは、訳文を読み、直すべきところを直し、その仕上がりに責任を持つ人間であるべきです。

ハウスルールとは?

Literessが、「AIのハウスルール」と手書きされたポスターをコルクボードに留めています。ポスターにはチェック済みの4項目――「変更はすべてあなたが承認する」「あなたの文章をAIの学習には使わない」「記録はすべて残す」「AI検出をすり抜ける小細工はしない」。その下では、小さな箱型のロボットがスツールに座ってメモを取っています。

  1. 変更はすべて、あなたが承認します。 私たちのAIエディタLiteressが提案し、あなたが採用するか却下するかを決めます。校正の修正は1件ずつ提示され、「承認」と「元に戻す」で処理できます。また、ワークフローにレビューのステップを設けて、人が承認するまで先に進まないようにすることも可能です。「すべて許可」スイッチもあるので、Literessにどんどん任せたい方はそちらをどうぞ。その場合でも、加えられた変更はすべて、Literessによるものとして一覧に残ります。
  2. あなたの文章をAIの学習に使うことはありません。 私たちのモデルにも、プロバイダーのモデルにも。Freeプランを含む、すべてのプランで。
  3. 記録はすべて残します。どのドキュメントにも、AIが書いた内容と、あなたが変更・採用・承認した内容が記録されます。エクスポートの前には毎回、Literessが「訳文を最後まで読みましたか?」と確認します。さらに、新しいオリジナリティレポートでは、そのすべてが単語数で集計され、1ページにまとまります。
  4. AI検出をすり抜ける小細工はしません。「検出されない」を売り物にするつもりはありません。出版社や学術誌、KDPからAIを使ったかと聞かれたら、「はい」と答えてください。そのうえで、自分が加えた作業を見せればいいのです。(それでも一応、AI検出ツールを試してはみました。読み物としてなかなか面白いですよ。)

ルールはあと2つあります。通常業務で私たちのチームがあなたのドキュメントを読むことはありません。そして、ログにあなたの文章が残ることも一切ありません。

記録って、どんなもの?

ウクライナ語から英語に翻訳された章のオリジナリティレポートのイラスト。AIが書いた単語は58%、人が書いたのは42%で、段落の100%を人がレビュー済み。アクティビティ一覧には、AIによる翻訳、人による編集、採用・却下した修正、そして訳文全体を読んだという本人の確認が並んでいます。

これがオリジナリティレポートです。AIが書いた単語の割合、あなたが書いたり変更したりした単語の割合、人がレビューした段落、そして日付入りのあなたの承認。これは文章がどう作られたかの記録であって、AI検出ツールではありません。そして「本当に自分で手を入れたの?」という問いへの、正直な答えでもあります。Freeプランではレポートを2件まで作成でき、有料プランなら必要なだけ作成できます。

詳しい話はどこで読める?

私たちがそれぞれの課題にどう取り組んでいるか、詳しくは新しい「倫理的で責任あるAI」ページをご覧ください。あなたの文章がどう扱われるのか、どのプロバイダーがそれを目にするのか、私たちがしないことは何か、そしてEU AI法が公開されるAI生成テキストに何を求めているのかをまとめています。

私たちは今でもAIが大好きです。ただ、その情熱にはシートベルトを締めておきたい。それだけのことです。

MariiaとVitalii

出典

著者

Mariia Ivakhnenko
Mariia Ivakhnenko共同創業者

Transept共同創業者。キーウ、オストラヴァ、そしてザルツブルクでの1年間を経て、英語学・英文学の学位を3つ取得。ウクライナ出身ですが、書くのはほとんど英語です。プロンプトエンジニアとしてAIの世界に入り、その後はプロダクトマーケティングとライフサイクルマーケティングを担当。実在の人物をもとにしたセミフィクションを書きながら、言語のあいだで何がこぼれ落ちるのかという問いを追い続けています。

Vitalii Vlasiuk
Vitalii Vlasiuk共同創業者

Transept共同創業者。ペンネーム「Mevkh」名義で執筆。言語学・文学の学位を取得後、ソフトウェア開発へと転向。シニアAIエンジニアとして、RAG、エージェント型ツール、LLM-as-judgeによる評価など、実用的なLLM機能を50,000人以上のユーザーに提供してきました。小説家としてはじっくり創作を進めるタイプで、机の引き出しには12万語に及ぶ風刺ロマンスファンタジーが眠っています。AI翻訳と自身の書いた散文との間で生じた摩擦こそが、すべての始まりでした。